薄羽カゲロウ日記(睦月十九日)

  午前3:00起床。午前9:30松井山手行の普通列車に乗り、三ノ宮駅に(往復800円也)。今日は月に一度の本の買い出しに出掛けました。最近、伊藤仁斎朱子学における「義」とは、「為すべき所を為し、為すべからざる所を為さぬ」という意味であるということを知りました。日本経済は現在開店休業状態といつた観があるので、この無為徒食の状態がしばらく続いてもいいんじやないか、とのんびりと考えています。


  列車に乗りながらまた回想に耽る。
  学生時代、通勤時間に大阪行の快速列車に乗つたところ忘れられない光景を眼のあたりにしました。背広姿のサラリーマンやOLで一杯の車両のなかのことですが、ある50がらみのサラリーマンが人垣をかきわけて列車の扉ちかくの椅子のてすりにもたれかかつて辞書らしきものを丹念に読んでいる紳士に声を掛ける。「おう。やつぱり君か。30年ぶりだね。□□に勤めたつていうけれど。まだ志を失わずにこんな物読んでいるのか」。紳士は小六法を懐にしまいながら「いや、ほんの手慰み程度だよ」と恥ずかしそうにと応える。もう一方の紳士30年ぶりの再開が感に堪えぬようでしたが、名刺をだして再会を祝することもできず、結局声を掛けられた紳士が途中下車することで、その再会にピリオドが打たれました。


  その情景をみて、私と先輩の会話。「先輩。45分すしずめ状態で同窓生の30年ぶりの再開もあんなにわずかな時間、そんなものですかね」。「俺、本当にサラリーマンてすごいなと思つてるんだ。あんな満員電車で45分立つていられることだけでもすごいぞ」。

 
  三ノ宮駅で下車するとフラワー通りを右に曲がりアーケード街の古本屋□□□□書店に。『不夜城』(馳星周)、『反哲学史』(木田元)、『名探偵松本清張』(斎藤道一)、『幻視者宣言』(埴谷雄高)、『丹波史を探る』(細見末雄)の5冊を購入(3,810円也)。次に□□□□□書店で、『紫苑物語』(石川淳)、『狂人日記』(色川武大)、『暁の寺』(三島由紀夫)、『林住記』(五木寛之)、『日本型うつ病社会の構造』(加藤諦三)の5冊を購入(4,410円也)。


  アーケード街を神戸まで歩くと8年前の昔と違つて、背広姿のサラリーマンが激減して歩きやすくなりました。経済の最前線にいるベンチヤー企業の社長と、佐高信氏と金子勝氏の共著によると、ここ8年間の所謂「企業だけが恩恵を受けている景気回復」は、小泉竹中路線の「ニューライト路線」とよばれる市場原理主義のもとサプライサイド・エコノミーを(=需要者の希望購入価格で買えるように供給者はコストを下げ無駄をなくし、消費者のさらなる需要を引き出す政策)実施したことによるという。
 

  その結果、日本の一部の企業は国際的な競争力を増し外国人投資家が株式を購入してもペイできるくらいの利回りを確保でき、懸念であつた2000年に日本に時価主義会計が導入されると表面に出てこざるを得ない銀行やゼネコンの不良債権を、アメリカのITバブルを模した株価上昇機運を市場があおって一面ではインフレ状況をつくり、日銀も量的金融緩和政策で金融のインフレ状況に対応できるよう処理をし、引締めでアジアから安く入つてくる物資による国内のデフレに対応したという背景があるらしい。


  また、ベンチヤー企業の社長によると「世代間の所得格差」が顕著で、60歳以上の世代が保有する金融資産は30歳未満の人々の9.6倍、40代の人々の平均貯蓄は200万円未満で60代の人々の平均貯蓄の2,000万円に遠く及ばないという。さらに、サブプライム・ローンで逃げた外国人投資家は純粋に投資利回りで投資するので、これからはBRICsのような国に向かうだろうと先行き不安を説いておられます。
 

 私もI先生に言われた通り「その兵糧では10年しかもたんな」といつた状況です。また働かねばなりません。